私の手元に昭和38年に日本放送協会から発行された「テレビジョン番組制作ハンドブック」という本があります。これはテレビ放送10周年を迎え「揺籃期を終え、青年期に入ろうとしている」テレビの一里塚としての意味で、今までのノウハウを一冊にまとめ、後進のテレビプロデューサーに向け書かれた本です。奥付けには「非売品」と示してあるので、あくまで局内、もしくはテレビ関係者のみを対象にしているのがわかります。しかし、640ページというボリューム、カラー写真などの図版の多さを鑑みると、単に内部へ向けてではなく、後の世に残すべき記録なのだ、という出版元の強い気概が感じられます。
一年ほど前、高円寺にある西部古書会館の古書即売会で、わずか300円を出し手にしました。当時の放送局長春日由三氏は冒頭にある、「刊行にあたって」の中で「本書をもとに、中堅、ベテランの諸君は新しい知識の導入を、新人諸君は広い視野に立っての専門的知識の涵養を、それぞれ心がけられ、放送、技術両部門相携え、互いに研鑽し合って、制作意欲の支えとして本書を活用されることを念じてやまない次第である。」と言葉を連ね、「昭和38年3月10日 しるす」と締めくくっています。今からおよそ半世紀前に出され、わずかな値段で投げ売られていた本の、忘れかけられた言葉に従い、私は高円寺北中テレビを、様々な方と一緒に、つくっていきたいと思います。
高円寺北中テレビの現状をお話します。一月にテスト放送を無事終えることが出来ました。多数の方のご協力をいただき、ほんとうにありがとうございました。問題は山積みです。やってみないと何が問題なのかわからなかった、とも言えるので、試験放送の意義はそんなところにもあったのかな、と思っています。
何はともあれ、人がいません。番組制作ハンドブック(以下ハンドブックとする)を開きますと、テレビを放送までこぎ着けるには、かような行程が必要です。「番組の編成」「企画」「制作」「美術」「撮影」「照明」「音声」場合によって「中継」「編集」「録画」「運行(番組を流すことです)」です。これに加えて、北中テレビの場合は、独自の放送設備で流しますので、「放送網の構築」、それの「維持」の仕事が加わります。仕事が多い、さらに専門的な知識を要するものばかり。これを杉並でいちばん小さな、わずか三十店しか加入していない商店街で行おうというのですから、「無謀」「無理」という声がでるのは、無理からぬことです。
そこで、北中テレビは、この仕事に関わってくださる方を募集しています。報酬はありません。基本的にボランティアです。会長の言葉をかりますと「報酬は、この馬鹿な商店街で、いっしょに街をつくっていくという面白さだけだよ」となります。私がこのテレビの企画に関わっていると、心地よい自由で感じます。気持ちのいい風を連想します。
この北中テレビの始まりは、総務省に届け出のいらない微弱電波を使い、地デジ化にで使われてなくなった、現在開いているアナログ1チャンネル、かつてのNHK総合の電波帯を使い、「高円寺北中テレビ」を放送するという企画が始まりです。受信するのは、今ではもう使われていない、アナログ端子が付いている古いテレビたち。ごみでしかないブラウン管のテレビもここなら生きる道がある。古いものに息吹が吹き込まれ、命の火が灯る。これは、ロマンですよ。
世界最初のテレビ放送はベルリンオリンピックの開会を宣言するヒトラーの映像中継でした。ナチズムのプロパガンダとともに、テレビは産声をあげたのです。わたしたちは、この見せられるだけのいっぽうてきなテレビとの関係を変えたいと思っています。
まずは、テレビを地域に引き寄せます。微弱なので、狭い地域にしか、放送は届きません。微弱電波は天候によって、画像が揺れます。雨と、風は、天敵です。そこで、あえて高円寺周辺と地域を制限し、ネットでも映像を見られるようにします。
北中テレビは見るだけのテレビではありません。地域の方やそれ以外の方にも出演してもらい、運営にも加わってもらう、いわば参加するテレビです。また、テレビを通してコミュニケーションをしてもらえればと思っています。
試験放送を終えましたが、申しました通り、北中テレビは、まだ出来上がっていません。そこで、テレビ局をいっしょに造っていただける方を募集します。
○撮影、編集、などの専門的な仕事をしてくださる方。
○ネットに詳しい方。
○電波に関する知識のある方。
○昔のテレビ放送に関わった事がある方。
○デザインが出来る方。
○小道具、大道具などを造れるかた。
○その他、テレビ局をつくってみたい、関わりたい、という方。
このブログで随時企画の進行具合を報告します。
映像も上げていきます。
高円寺北中テレビを面白い、応援したい、でも何も出来そうもない、という方、この記事をネットで広めてください。
ツイッターやFacebookで書いてください。
外国語が出来る方は翻訳して、海外に伝えてください。
北中テレビを成功させ、このノウハウを、日本中、世界中に広めて行きたいと思っています。テレビを通じて、コミュニケーションをする、小さな地域が、世界中の様々な場所に出来れば、特色を持った地方をが生まれ、人間の多様性を肯定する世界が出現することに繋がるのではないかと、想像します。そして希望します。
「いろいろがいっぱい」を高円寺北中テレビは実現したいのです。
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